
マドラスの歴史を紐解く
~脈々と流れる"本物の履き心地"へのこだわり~

100年近くにわたり、靴づくりに対して真摯に向き合ってきたマドラス。
伝統を大切にする一方で、
時代の流行や最新の技術を取り入れ
絶え間ない革新を繰り返してきました。
創業以来、衰えることのない靴づくりへの情熱やこだわりを
その歴史とともに振り返ります。
創業期
世に先駆け
グッドイヤーウェルト製法を導入
現在のマドラスの起源となるのが「岩田商店」。1873年 (明治6年) に、現代表の曽祖父である初代岩田武七氏が愛知県名古屋市で創業しました。2代目武七が経営する頃には、鋳物や鮫の皮などの販売のほか、陸軍に靴のパーツを納めるようになり、その後、1921年 (大正10年) に革靴そのものの製造を主な業務とする亜細亜製靴株式会社を設立。アメリカからグッドイヤーウェルト式の製靴機械を導入し、本格的な靴づくりが始まりました。



19世紀初めにアメリカで誕生したグッドイヤーウェルト製法は、帯状の革であるウェルトとアッパーと呼ばれる靴の甲部分を中底のリブに縫いつけ、その後ウエルトと本底を縫い合わせる製造方法です。二度の縫い合わせによる頑強性と、複雑で丈夫な構造。この2つがグッドイヤーウェルト製法による革靴が質実剛健な理由です。試行錯誤を繰り返しながら始まった靴づくりでしたが、当時の最新設備を早くから導入。ものづくりへの飽くなき探求心は、今なお変わらないマドラスの伝統の一つといえます。
職人達は靴づくりのノウハウや技術を、次第に自分達のものにしていきました。そして、1952年には全国靴コンクールで優勝(右写真が優勝した一足)。お客様はもちろん、同業他社からも称賛されるほど靴づくりの技術は高いレベルにありました。
それは、全国靴コンクールを連続優勝したことや、現在でも履きこなせるほどモダンで気品溢れるデザインが物語っています。


各種博覧会などで金賞を受賞。皇族の方々も着用されていました。

当時の設備に関する概要が記されたもの。最新の設備を導入していました。

当時の亜細亜製靴の作業風景。靴づくりに打ち込む様子がわかります。
イタリア・マドラス社との提携が更なる飛躍の契機に

マドラス社との技術提携がきっかけに
アジア製靴にとって大きな転換点となったのが、イタリア・マドラス社との技術提携です。1965年 (昭和40年) 、世界のファッションの中心であり、靴づくりの本場であるイタリアの生産背景や確かな技術を学ぶため、当時、最大の規模を誇ったマドラス社の工場を視察。グッドイヤーウェルト製法に力を入れていたアジア製靴にとって、マッケイ製法の技術を学ぶことは、会社として新たな挑戦をする姿勢の表れでもありました。後に、“マッケイ縫いのマドラス”と呼ばれるように、同社の根幹となる靴づくりが始まったのです。
※1959年(昭和34年)に「亜細亜製靴」から「アジア製靴」に改称
手探りでスタートしたマッケイ製法での靴づくりは、グッドイヤーウエルト製法に精通した職人たちにとって“まったく違う”感覚でした。特に、ゴツくて重厚なグッドイヤーウエルト製法の靴とは対照的に、マッケイ製法の靴はスマートで軽快なため、その雰囲気を再現することに苦戦。一時は生産数が落ちるほどだったといいます。しかし、「品質の良い世界一の靴を作ろう」という想いのもと、職人たちは一丸となって靴づくりに励んだのです。
職人のたちのこだわりと努力が実を結び、アジア製靴が生み出すマッケイ製法の靴は徐々に支持を集めていきました。
マッケイ製法の特長である、軽さと足への馴染みやすさに加え、日本人に合った快適な履き心地を追求したこと。
提携を通じ、国際的なデザイン感覚やセンスを身に付け、ニーズを捉えた美しい一足を次々に生み出したことが理由でした。




美しく、履き心地に優れたマッケイ縫いによる革靴ブランド「マドラス」は、1ブランドの枠を越えアジア製靴の代名詞と言える存在にまで成長していきます。1983年には社名を現在のマドラス株式会社へと変更しました。アジア製靴がつくる靴だけでなく、「マドラス」ブランドの革靴は世界各地で支持を集めます。イタリアのマドラス社は上質な革と洗練されたデザインが人気を博し、ミラノやトリノをはじめイタリア国内に多くの店舗をオープン。また、アメリカのロサンゼルスへも出店するなど、広く受け入れられました。その後、マドラスは1994年に全世界のマドラス商標権をイタリア・マドラス社より譲り受けました。
お客様に向き合い、貪欲に挑戦し続ける


マドラスが次に取り組んだのが、客層やデザインテイストが異なるさまざまなプライベートブランドの立ち上げでした。1990年には「madrasのセカンドライン」としてMODELLO(モデロ) をスタート。2002年にはGORE-TEX®ファブリクス搭載のブランドmadras Walkを発表しました。イタリア語で「模範」を意味するMODELLO(モデロ)では、より洗練されたデザインを25歳を中心とした若年層へ提案。madras Walkは防水性や通気性に優れた“天候を問わない”靴であるだけでなく、履き心地の良さも追求。特許を取得した「3Dヒールカップシステム」を搭載するなど、歩きやすく機能性の高い商品を次々と発表し、主力ブランドのひとつとなりました。
また、新ブランドをスタートさせるだけでなく、イタリアやフランスにある著名ブランドとのライセンスビジネスを推進。各ブランドの世界観やイメージなどを学び吸収することで、デザイン力・製造技術ともに大幅なステップアップを果たしました。その技術や経験を自社の靴づくりに反映、多彩かつ高クオリティなプロダクトを次々と生み出していったのです。


2012年には、これまで培った靴づくりのノウハウや技術を最大限に活かし、スニーカーブランドのJADE (ジェイド) をスタート。得意とする革靴でなく、新たな市場へのチャレンジであるこのブランドは、ストリートパフォーマーが満足できる機能とデザイン性を兼ね備えたシューズを目指し開発されました。その後2013年には、メインラインであるmadrasブランドにおいて、GORE-TEX®ファブリクス搭載のモデルを開発。ドレス顔でありながらも悪天候に対応できるシューズは、すぐさま人気モデルとなりました。
お客様が必要とする一足を考えたとき、最先端のデザインや流行、そして気候までをも考え、製品の改良や新ブランドを生み出してきたマドラス。そのどれもが、一側面のみが優れているというだけではなく、デザイン・機能性・履き心地の三拍子がそろった”本物の靴”なのです。



さまざまな自社ブランドの成長とともに、直営店を全国で展開。ブランド育成の場とするだけでなく、新たなサービスを提供することでお客様の満足度を高めていきました。2008年からマドラス栄久屋大通店で始めたオーダーシューズシステムの MOSS (madras order shoes system) は、現在では全国5店舗ほか一部の百貨店で展開。MOSSには、お客様のデータを入力すると足の形に合わせた最適の木型が選ばれる独自のソフトを導入。職人の技に最新の技術を組み合わせた、マドラスならではのオーダーシステムです。さらに、2016年からはカラーオーダースニーカーシステムである MOCOS (madras original color order sneakers) を開始。3ヶ所のメインカラーに加え、ソールやステッチなど5ヶ所のサブカラーをそれぞれ選択可能。色とパーツの組み合わせは6兆パターン以上もあり、自分だけの一足を作る楽しみを実感できるオーダーシステムです。
このように新しいブランドやサービスを生み出していく根底には、時代に合わせ柔軟に変化を続ける姿勢と、「本物の履き心地」を追い続けるクラフツマンシップという、マドラスのアイデンティティが常に感じられます。
最高の一足を追い求めて…

社長メッセージ
弊社はお蔭様で昨年5月18日に創業95周年を迎えることが出来ました。
大きな節目である100周年に向けて、<価値ある商品>を創造し、ご提供していくことで、皆様のより豊かな生活づくりに貢献したいと心新たにしています。
時代と共にあらゆるものが変わっていますが、これからも<本物の履き心地>を追求し、グローバルマーケットでも満足していただける靴作りを目指してまいります。
プロフィール
岩田達七
マドラス株式会社 代表取締役社長
1950年生まれ。73年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、マドラス株式会社(旧アジア製靴)に入社。
2010年に代表取締役社長に就任。
