自分だけの特別な一足、オーダーシューズ入門

靴好きなら誰もが憧れるオーダーシューズ。
ちょっと前なら高嶺の花で手が出せなかったオーダーシューズですが
最近ではお手頃価格で注文できる時代になっています。
今回はmadrasのMOSS (マドラス・オーダー・シューズ・システム) を取り上げ、
「自分だけの特別な一足」を形にするオリジナルシューズが
丁寧に作られていく様子を追っていきます。

すべては店での採寸から始まります

MOSSのオーダーシューズは、まずマドラス直営店に行って、足の採寸を行うことから始まります。
スタッフがあなたの足のサイズ (足長・足囲・甲周りなど) を丁寧に採寸していき、相談しながらデザインや素材、色を選んでいきます。
所要時間はおおよそ20分から30分くらい。これでオーダーが完了します。
オーダーはちょっと敷居が高いと思っていた人も、意外に挑戦しやすいと思いませんか?

スペシャルな一足はこうして作られる

お店で採寸した情報は、すぐに国内にあるマドラスの工場に伝えられます。事細かく計測されたサイズはあなたの足のデータとして記録されます。ここからは職人たちの腕の見せどころ。データ上の数字を職人たちが立体化していきます。細かく丁寧にあなたの足の形を再現していく作業、これこそが既成靴にはない、MOSSならではの職人技です。

ここからは、実際に編集者が注文した、オーダーシューズが出来上がるまでを追っていきます。

まずは足の形に近いラスト(木型)を選択

靴づくりのポイントとなるのがラスト (木型)です 。現在MOSSで選択できる靴先の形状は4種類。それぞれに対して、サイズとウィズの異なるラストが100台以上用意されています。その中から、お客様の足に最も近いものを選び出し、必要に応じて更に採寸した数値に近づくように補正していきます。

採寸値をもとにラストをカスタマイズ

お客様の足の採寸値と、ラストの足長・足囲・甲周りの数値を比較しつつ、ラストを補正していきます。例えば、甲の高さを微調整するために、ベースとなるラストの上に厚さ2ミリ程度の革を貼り付けていきます。

人間の足というのは、右上の写真のように、右足と左足、それぞれ足の形状が違っていることがほとんどです。採寸データから左右の足の違いを見出し、慎重に作業していきます。この作業が、MOSSの靴づくりの基本であり、もっとも重要なポイントとなります。ラストの採寸値が足の採寸値と同じになるように調整していきます。

パーツの裁断

アッパーに使用する革の上に切り出した紙型を載せていきます。この時職人が最も気を配るのが各パーツの配置です。革の繊維方向や各パーツの特性を考えながら、無駄のないように効率的に配置し、正確に各パーツを裁断します。

アッパーを成形するラスティング

ラスティングとは、ラストにアッパーをつり込み、立体的な靴の形状にしていく工程を指します。まず、縫製されたアッパーに軽く水分を含ませ、革が割れないように下準備を施します。次に、蒸し器を使ってラストとアッパーを馴染ませた後、機械を使ってつり込んでいきます。機械だけを用いると、力のかかり具合が均一になってしまうため、その後、手作業で仕上げていきます。ペンチとハンマーが一体となったワニと呼ばれる道具を使って、手で土踏まず部分を調整しながらつり込みます。内側のライニングもアッパー同様に、力を加減しながらつり込み、内側と外側に差異が生じないように注意します。

仮止めした靴のフィッティングチェック

アッパーにインソールとアウトソールを仮止めした状態のものを、店頭でお客様ご本人に試着して頂きます。まず、足を入れた状態でマドラスのスタッフが甲や側面を手で触れたり目視で確認したりしつつ、お客様の感想を伺い、その情報を工場にフィードバックします。

再び工場に戻り、修正または次の工程へ

試着後の靴が店から工場へ戻ったら、仮止めしていたソールをアッパーから外し、店頭からのフィードバックを基に、修正を加えたり、修正不要であれば次の工程へと進みます。

今回オーダーしたのは、革底を使用したマッケイ製法の靴なので、この段階でアッパーと革底を縫い付けていきます。革底の切り込み部分を縫った後に、予めめくり上げていた革を元通りに伏せるため、縫い糸が表からは隠れる状態になります。
靴を履いた時に、足に縫い目が当たって不快にならないよう、縫い目の位置や針を入れる角度に注意しながら、正確且つ、スピーディーに縫い合わせていきます。

底周りの仕上げ

革底にヒールを取り付け、余分な部分を切って形を整えたり、底面を研磨するなどして、底周りを仕上げていきます。MOSSの革底半カラス仕上げの場合、中央の土踏まず部分に美しい深緑色のペイントを施した後、工具を使って飾り模様を刻みます。着用時には見えない部分ですが、職人のこだわりが詰まっています。

※お選び頂いたソールの種類や製法によって若干作業が異なります。

底面にmadrasの刻印が押されて、底周りが完成。

※madrasの刻印は「革底半カラス仕上げ」をお選び頂いた場合に限ります。

アッパーの仕上げ

最後にアッパーの革に着色します。下処理を済ませた靴に、スポンジと筆を使って色を塗っていきます。ムラにならないよう手早く均等に塗り重ねたり、意図的な濃淡をつける「焦がし」と呼ばれる手法を用いたりしながら、繊細な職人技で仕上げていきます。

完成!

オーダーから約2か月で希望した靴が出来上がりました。

※混雑時には3~4ヶ月、お時間がかかる場合もございます。

オリジナルの収納BOX付き

完成したシューズは店頭で、オリジナルの桐の箱に入った状態で受け取ります。

足のつま先から踵、そして甲にかけて包み込むようなオーダーシューズの感覚は、今まで体験したことがない世界。
靴を履いてしっかりと靴紐を結び、軽く歩いてみると、オーダーシューズの良さがじんわり、少しずつ実感できます。

編集者が出来上がった靴を実際に履いてみると……
まず、踵部分はちょうどいい密着度、踵を丁寧にしっかりとしたホールド感で包み込んでくれます。そして体重の負荷が最もかかるといわれる小指周りは、点ではなく面で接するような感触です。また、靴を選ぶ際に重要視されるボールジョイントと呼ばれる親指と小指の付け根。その部分はアッパーと適度な距離感で、踏み返しも順調。まさにオーダーシューズならではの究極のフィット感、履き心地の良さが体験できます。

履きやすさは当然のことですが、職人によって仕上げられたアッパーの色合い、輝き、ブランドロゴが入った刻印入りのレザーソールの美しさも見逃せません。

是非お試しください!

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今回オーダーしたモデルの詳細

トゥ:エッグトゥ
カラー:ダークブラウン
デザイン:プレーン、外羽根
ソール:革底半カラス仕上げ
製法:マッケイ製法
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ダイナイトソールを選んだり、別料金のオプションでヒールアップ、キングサイズ (28.5cm~)、革底ゴム半貼、ブラックラピト製法を
選ぶことも可能です。

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