90歳の靴磨き職人 キンちゃんに学ぶ
革靴の愛しかた

日本を代表するホテル『帝国ホテル 東京』の本館地下1階のシューシャインコーナーで、
90歳の靴磨き職人が働いています。
米軍仕込みの熟練の技で多くの靴を磨き上げ、様々な著名人からも“キンちゃん”の愛称でご指名を受けていることでも知られています。
今回はキンちゃんのシューシャインの歴史と革靴の磨きかたを紹介します。

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ースぺットパレシの技を駆使し、有楽町エリアで活躍ー
 


 

「とにかく映画が好きだったんで。佐世保にいた頃は、バーテンダーやシンガーなども経験しました。
靴磨き職人になったきっかけは米軍基地の将校のルームボーイ。彼らは毎週土曜日に身の回りのチェックがあるため、常に磨かれた靴を履く必要があり、
そこで米国流の靴磨きのテクニックを自然と学びました。
そのときに美しいツヤを出す方法として靴墨に唾をつけて磨く『スぺットパレシ(spit and polish)』の技を習得。
東京に出てきて日比谷の屋外で靴磨きをスタートし、口コミで評判が広まり、
かつてあった高級輸入靴店の『ウォーカー靴店』に誘われ靴磨きをしていました。
この店のお客様であった帝国ホテルの犬丸一郎さんにお声がけいただき、帝国ホテルでの靴磨きがスタートしたのです」

 

石原裕次郎さんや高倉健さん、アラン・ドロンさんなどの名優、シンガポール初代首相のリー・クアンユーさんをはじめとした政財界のトップなど、
キンちゃんはさまざまな著名人から指名を受け、足元を輝かせてきました。

 

「足元を見れば人となりがわかります。お洒落な人は特に足元にポイントをおいて決めているもの。
上物を見なくてもバランスが取れていることがわかりますし、生き方も含めスマートできちんと自分のスタイルがありますね」


 


 -靴磨きで特に大切なのは“布選び”-
 


 

 「靴磨きする上で特に重視しているのが布選びです。

革靴を拭き、布を指先に巻いて油性の靴クリームを摺り込んでいき、拭き取る。この一連の作業を行う際に、使用する布によって磨きの結果が異なってくるからです。
私の結論は、綿100%の柔らかい布一択。混紡のものはNGです。特に番手の高い、120番手や140番手のきめ細やかなYシャツがベスト。
デリケートな革を傷つけることなく、美しい光沢を長く維持できます。
また、靴磨きで一度使用した布は、必ず丹念に洗濯してクリーム成分を完全に取り除き、乾かします。
これを繰り返していくうちに、綿100%の布はさらに優れた使いやすい布に進化していきますから」


 






-革の目を読み、革と対話をして磨いていく-

 

  


現在では衛生上、スぺットパレシの技は唾ではなく水を使用して行っているキンちゃん。


「水を布につけて靴を磨いていきますが、革の方からいろいろと語りかけてきてくれます。
革にはそれぞれ目があり、流れがあります。それを見極めて、しっかり目に沿って靴墨を入れていくことがポイント。
革は正直だから、靴墨が十分入ってお腹いっぱいになったら自然にアンサーがあります。これは長年靴を磨き続けてきたからわかるもの。
そうしたら仕上げの段階になり、靴墨をしっかり刷り込んでいきます。布に靴墨がつかなくなったら完成です」

 

靴の状態にもよりますが、おおよそ片足5分、約10分でシューシャインを行っています。

 





-靴が好き、それが90歳まで靴磨きを続けている理由-

 



 

90歳を超えた今でも現役で靴磨きを続けているキンちゃん。その秘訣を伺うと。
 

「やっぱり靴が好きだから、それに尽きます。
帝国ホテルには世界各国から様々なお客様が訪れるため、いろいろな靴との出会いがあります。
今でも知らない靴と出会うと、必ずお客さんに尋ねます。
そうするとお客さんはどこで買ったとか、あそこでオーダーしたとか会話が弾み、喜んで教えてくれるのです。生涯、勉強、それが楽しいのです。
今でも健康で仕事をしていられるのは、仕事に惚れているから。
靴磨きでは手先しか動かしていませんが、全身ハイな状態になります。
そしてお客様との会話を楽しむことで、いつも新鮮な気持ちになっていられますね」


 





 

いつまでも靴磨きが楽しいと話すキンちゃん。
マドラスを愛用している靴好きの皆さん、ぜひ一度帝国ホテルのシューシャインコーナーまで足を運んで、その技を堪能してみてください。


 


 

帝国ホテル シューシャイン
(公式HP URL: 
帝国ホテル 東京 | 公式サイト (imperialhotel.co.jp)  )
 

帝国ホテル 東京 本館地下1階

営業時間:10:0013:00 14:0018:00

定休日:日曜、祝日

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