
銀座タニザワの5代目谷澤良郎さんが語る
伝統と進化の鞄作り

1874年に創業し、150年を超える歴史を持つ鞄の老舗「銀座タニザワ」。
初代の谷澤禎三氏は「鞄」という文字を考案し、1890年に銀座のお店に掲げ、
それを明治天皇が見かけたことをきっかけに「鞄」の字が
日本国中に広がったという逸話を持ちます。
今回は5代目を継ぐ、谷澤良郎さんに老舗鞄メーカーとしてのお話とともに、
将来に向けての取り組みなどを伺いました。
ー銀座タニザワの5代目店主を務められている谷澤さんですが、当初から銀座タニザワでお仕事をスタートしたのですか?
谷澤 「大学卒業後、すき焼きの『人形町今半』に就職しました。
将来を見据えて、老舗で同族経営の企業に一度は勤めたいと考えまして、その枠で就活しました。
日本酒のメーカーさんや味噌屋さんなどの食品系にもエントリー。
8年ほど勤務し、名古屋の新店舗立ち上げなども担当させてもらいました。
『人形町今半』の理念として、お客様第一主義は当然なのですが、
その上で従業員を大切にするということを実践されていました。
人が財産であり、宝であるという経営方針は、今の自分の中に生かされています。」
ー『人形町今半』での経験が現在の谷澤さんを形作っているのですね。
谷澤 「店舗運営という面でも本当に学びが多かったです。
上野店、新宿、羽田空港、名古屋それぞれのお店で接客業に携わりましたが、マニュアルが最低限しかなく、
『最高は自分で作りなさい』という教えのもと、勉強をさせてもらいました。
また経営者の方もお店に頻繁に顔を出され、従業員の顔や空気を感じられていたことに大いに感銘を受けました。」
ー150年を超える歴史を持つ銀座タニザワですが、どのように感じられていますか?
谷澤 「やはり歴史の重みを痛感します。
歴史がある分、お客様にもそれぞれのタニザワがありますし、そこに難しさも感じます。
ただ私の役割としては歴史を受け継ぎながら、若い世代にも発信していくこともありますので、
SNSはこまめに更新するようにしています。
そうすることで興味を持った方が銀座のお店に足を運んでいただければと思っています。」
ービジネス用途の方が多いかと思いますが、お客様の層も変わってきている感じでしょうか?
谷澤 「古くからタニザワの鞄を愛用していただいている顧客の方はもちろん多いですが、
フレッシャーズの方が先輩に勧められて購入されたり、親子で修理しながら長く使用されている方などもいらっしゃいます。
やはり革という素材の素晴らしさを実感されるとファンになっていただけますね。
傷が入ってもリペアできますし、ハンドルなどの作り直しも可能です。
私も日々革の素晴らしさを感じています。」
ー鞄づくりやリペアなどでは職人さんの技術力も大切かと思いますが。
谷澤 「実は私が入社した当時は職人さんが足りない状況でした。
タニザワを代表するダレスバッグが途絶えてしまうという危機感を感じ、職人を増やすことは必須でした。
この先数十年、私と一緒に鞄と向き合い、タニザワの鞄作りを繋いでいける人を育てていこうという決意を固めました。」
銀座タニザワの象徴がダレスバッグ。
1951年に平和大使として日本を訪れたジョン・F・ダレス氏が持っていたバッグを見て、2代目の谷澤甲七氏が考案したものだ。
開口部が広く、たくさんの荷物が収納できる口枠式で、多くのジェントルマンが愛用してきた日本が誇る逸品である。
(右)ダレスバッグ¥170,500、(左)ミニダレスバッグ「フラン」シュランケンカーフモデル¥198,000
ータニザワさんといえばやはりダレスバッグかと思いますが、製作は難しいものなのでしょうか?
谷澤 「鞄づくりの全てが詰まっていると言っても過言ではないかと思います。
革を縫うことはもちろんですが、鉄枠や錠前などの金具の扱いなども繊細で、
さらに歪みなどが出ないようにしっかりバランスをとらなければなりません。
鞄検定1級の試験題材がダレスバッグですからね。」
ーそうなんですね。谷澤さんは小さい頃から鞄づくりを見てこられたのですか?
谷澤 「いえいえ。家業のことはなんとなくしかわかっていませんでした。
ですので全くの素人で鞄業界に入りました。
今は鞄教室に通って製作も学んでいます。
鞄のクオリティを自分でしっかり見れてチェックする必要がありますし、
いつかは自分でダレスバッグを作ってみたいと思っています。」
ータニザワに入社し、ご自身で着手したことはどのようなことでしょうか?
谷澤 「タニザワというブランドの名に相応しい商品を取り扱うということですね。
品質がブレることのないよう、職人や販売員それぞれがしっかりチェックし、
自信を持って送り出すことにまずテコ入れしました。
結果的にお客様も従業員も、商品が良くなったと言ってくれています。
この先もさらにクオリティを突き詰めて、オリジナルのラインナップも増やしていきたいと思っています。」
ー銀座タニザワの鞄はクラシックなイメージがありますが、カジュアルな鞄も展開されているのですか?
谷澤 「トートバッグやリュックなど、時代が求めているものをタニザワならではのこだわりで作っています。
特に40代前後のビジネスマンの方がエントリーモデルとしてご購入いただいています。
また銀座という土地柄、インバウンドのお客様も多く、リュックやショルダーバッグ、
コインケースなどを購入されることも増えました。
海外の方は、お店に入った瞬間に「ナイス スメル!」と革の匂いを誉めてくれます。
特に海外の富裕層の方はメイド・イン・ジャパンのクオリティを非常に気に入られていて、指名買いをされていますね。」
ビジネススタイルの変化や時代感にあわせ、銀座タニザワではカジュアルバッグも展開している。
150年を超える鞄作りの技術を詰め込まれ、使用感も抜群だ。
(右)シンプルリュックサック¥51,700、(左)カジュアルトートバッグ¥49,500
ーマドラスも同じ革を扱うメーカーですが、どのようにお感じですか?
谷澤 「革で化ける「靴」を扱うマドラスですので、親近感があります。
さらにマドラスも100年を超える老舗メーカーなので色々と参考にさせていただくことが多いです。
革という素材でしっかり商品作りを行い、新たなことにもいろいろとチャレンジされていますよね。
また私は接客で店頭に立つことが多いので靴選びは大切にしています。
マドラスのシューズはmetaインソールが搭載されていて、履き心地が快適で姿勢もピンとし、疲れない。
それでいてスーツにも合うデザインなので優秀ですね。」
M620MT BLACK
¥36,300(tax included)
トリプルイミテーションステッチをアクセントとして効かせた内羽根式のストレートチップ。
気品のある斑模様が際立つアッパーは、マッケイ製法独特の返りの良さを備え
滑り止めがレイアウトされたレザーソールとの相性も抜群だ。
ー銀座でお店を構えていますが、谷澤さんから見て銀座はどのような街ですか?
谷澤 「銀座は商店街だと思います。
今はその側面が見えづらいですが、昔からのお店などさまざまな業種の人たちが混じり合って、
街を形作っているのが銀座の魅力です。
私と同年代の若い方にも銀座をもっと楽しんでもらいたい。
そのための活動もしていきたいと思います。」
ーマドラスも銀座でショップを展開し、銀座の街の方たちとの交友も深めています。
谷澤 「はい。日本の老舗ブランドで、同じ革、そして同じ銀座で商売をしていますので親近感を抱いています。
そんな関係性から、2022年にSINCE1612プロジェクトで携帯式レザートレイをコラボレーションしました。
ぜひこれからも一緒に銀座を、革業界を盛り上げていきたいですね。」
銀座タニザワとマドラスとの共創によって生まれた携帯式レザートレイ『VOYAGE』。
革で包(くる)むと再解釈して制作した銀座タニザワ製のレザートレイの革を、
マドラス社の開発したレザー用抗菌加工処理を施している。
各¥29,700
https://store.since1612.com
銀座タニザワ 専務取締役
谷澤良郎さん
1990年生まれ。
1874年創業で「鞄の文字」「ダレスバッグ」「ネオンサイン」の3つの日本初を持つ銀座タニザワ5代目店主を務める。
老舗こそ時代に挑戦し続けるを信念に、GINZA TANIZAWA TOKYO工房を立ち上げ、メイド・イン・ギンザの鞄作りに励んでいる。
GINZA TANIZAWA TOKYO 本店
住所:東京都中央区銀座1丁目7-6
電話:03-3567-7551
営業時間:11時〜19時30分(平日)/11時〜19時(日・祝)
定休日:元旦のみ
【metaインソール 搭載シューズ一覧】
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【metaインソール 搭載スニーカー一覧】
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